個性あふれるクリエーターたちがデザインした創造性豊かな作品は、どれもおもしろく、革新性にあふれたデザインで、素材としてのM・キャンパスと、製作に携わった職人たちのクラフツマンシップが見事に融合したこれらの作品は、と次の時代に続く革新性を強烈にアピールするものとなりました。 その翌年の97年には、アーティスティック・ディレクターとして、30代の若さながら世界的な注目を集めるニューヨークのデザイナー、Mの起用が発表されました。
Mによって、従来の鞄に加え、プレタポルテや靴といった新しい製品ラインがつくられ、伝統とクラフツマンシップを誇るLの世界に新たな魅力が加わることになりました。 2001年の春夏コレクションで2001年の春夏コレクションで発表された「M・ゲラフィティ」は、前衛的アーティストのSと組んで、M・キャンパスに、グラフィテイ(落書き)を描きました。

SやSのハートを訪れたとき、Mは、彼女の父親のSから受け継いだLのスーツケースに気がつきました。 そのスーツケースは、黒い絵の具が塗られ、その下にM・キャンパスが透けて見えていました。
ここからアイデアを得たMは、伝統を誇るMの上に落書きすることで、古くからの伝統と現代性を融合させることを思いついたのです。 これは、M・キャンパスの外観を一変する大革命です。
過去にとらわれずにこの大胆なアイデアを受け入れ、それを楽しむ柔軟さ、懐の深さが、新たなる世界を演出したといえます。 「Lの歴史は、自分にとってアイデアの宝庫だ。
それを応用してアクセサリー類を考えるのはたいへん刺激的で楽しい作業だね」とMが言うように、最近では、驚くような個性の強い商品、楽しい裏切りのある商品も出てきています。 Mの進化は、2002年、MがM氏と出会うことでさらに加速します。
M・キャンパスの柄への挑戦が、LのアーティスMにとって、ティック・ディレクターとしての課題でした。 その可能性を引き出してくれるコンテンポラリー・アーティストを探していたMが出会ったのが、日本人現代美術家、M氏でした。
彼の強烈な個性と、子供のように無邪気でありながらどこか皮肉っぽくて陰のある不思議な作風に惹かれ、Mは、即座に彼をLのアトリエへと招きました。 T大学美術学部の日本画科を卒業したM氏は、日本画家としては初めて博士号を取得しています。
早くから、日本よりも海外で評価が高まっていました。 発表されたM・マルチカラーは三色、アイ(EYE)・ラブ・Mは、96ものシルクスクリーンを使い、高度な技術でプリントされた62色が、バッグを彩り、まさに芸術作品と呼べるものとなりました。
発表を記念して行われた表参道店でのスペシャル・ディスプレーは、M氏がLのために製作した巨大な「Lパンダ」が一階のエントランスでお客様を出迎えるなど、そのスケール感はインパクトあふれるものでした。 このイベントは新製品発売に伴うスペシャル・ディスプレーであるばかりでなく、M氏とのコラボレーションによって創造された新しいLの世界を、表参道という街をとおして発信していくアート・エキジビションでもありました。

アートであると同時に日常の道具これら一連のアーティストとのコラボレーションで、Lは、商品にアート性を吹き込もうと考えています。 M氏とのコラポレーションを記念して行われた、表参道店のスペシャル・ディスプレーがまさか、バッグがアートになるなんてと思われるかもしれません。
しかし、人は、生活のレベルが上がるほどアート志向になるものなのです。 また、ものづくりに思いきりこだわった究極の製品も、アートに近づくのではないでしょうか。
日常使うものですが、大量生産できず、アートであると同時に、機能的な日常の道具であることが重要です。 ラグジュアリー・ブランドの成功の鍵だと前にも述べましたが、将来はそれに加え、芸術性の高いものを、手の届く価格帯で提供できるプロセスの創造に挑戦しなければならないと思っています。
長いあいだ、家族経営を続けてきたLですが、海外へとマーケットを広げたことで、国際企業としての道を歩むことになりました。 84年には、パリとニューヨークの株式市場に同時に上場し、多角化の道を模索することが容易になりました。
(トランク職人)としてスタートしたLは、一世紀以上にわたってそれを家業として守り、自分が専門でない分野への多角化には消極的な態度を保ってきました。 ブランドが有名になると、本業以外の分野へ製品ラインを広げることで売り上げの増加を図るといった誘惑にかられがちです。
しかし、進出した分野で必要な技術力が自社にない場合には、他社がつくった商品にただブランドの名前をつけて売るということになってしまいます。 そこで、当時の経営陣は多角化戦略として、ノウハウのない分野に製品ラインを広げるよりも、その分野ですでに実績のある一流ブランドを買収するという方法を選びました。
その最初の例が、85年の、シャンパンの名門、Gコ社との合併です。 当時の社外重役のひとりがシャンパン・メーカーのオーナーだったという関係もありますが、業種こそ違うとはいえ、長い歴史と伝統を誇るフランスの文化を代表する、ブランドという共通の価値を有する両社にとって、それは妥当な合併でした。
また、この年には、スペインの誇る皮革、ブランド、Rを設立しています。 Rの海外での販売権を獲得し、2年後の87年にはM社との合併を果たし、LMが誕生しました。
しかし、この合併により、フロー型のLとストック型のMという異なる財務体質の企業が、それぞれの弱点を補完しあえることとなり、そういう意味バランスのとれた安定した成長が期待できるグループ企業が誕生した。 翌年の88年には、G社の合併と同時にその子会社としてLの傘下に加わっていたBの関係で、Jを買収しました。

このように、徐々にファッションブランドをグループに迎える動きが始まっていました7進化しつづけるブランド創業分野以外への新規参入が、90年5月、LMHの経営会議議長兼社長にB氏が就任したことにより、この動きが加速されることになりました。 A氏がFという持ち株会社を通して保有していたC、C、Sといったファッションブランドがグループに入り、兄弟会社となりました。
ここで初めて、合併の相乗効果、が、財務面だけでなく、ファション面でも発揮される土壌が整ったといえます。 具体的には、Rがファッションビジネスへ本格的に参入する土壌がつくられたということです。
新経営陣の登場90年にはA氏の招きで、40代前半のIが仏L社の社長に就任します。 A氏と同じくフランスのエリート校であるEを卒業したCは、いくつかの企業でマネジメントの経験を積んでいましたが、ブランドビジネスにかかわるのはこれが初めてでした。
Lが積み重ねてきた歴史や伝統を学ぶことから始めました。 彼はまずビジネス面では、海外マーケット進出の最初のケースである日本を理解しようと熱心でした。
ブランドビジネスは、ただ単に数字だけを見て理解できるものではありません。 創業者の家族の思いや、職人の丁寧な手仕事、ブランドにかかわってきた人たちの思い入れなどがブランドの本質をつくりあげてきたということを理解しようとしていたのだと思います。


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